連名要望書「地球温暖化対策税の使途拡大等に反対する」

2015 年11 月9 日

• 安倍政権の下、日本経済の再生に向け、未来の成長につながる設備投資の拡大が期待されており、そのためには、事業環境のさらなる改善が必要である。しかしながら、東日本大震災後、原子力発電所の稼働停止による化石燃料輸入の増加や、円高修正によるエネルギーコストの高騰等により、産業用の電気料金は約４割上昇し、事業の足かせになっている。現に、電力多消費産業を中心に、事業からの撤退や倒産、海外への移転が生じている。こうしたなか、2012 年10 月に導入された「地球温暖化対策のための税」（地球温暖化対策税）について、2016 年４月に予定されている税率引上げの凍結、および廃止を含めた抜本的見直しを求める強い意見が産業界の中にある。
• その一方で、来年度税制改正に向け、農林水産省や一部地方公共団体から、地球温暖化対策税収の使途を拡大して森林吸収源対策に充てるべき、その一定割合を地方に譲与すべき、あるいは森林整備等のため二酸化炭素排出源を課税対象とする森林環境税(仮称)を創設すべき、との要望が出されている。
  また、環境省は、森林吸収源対策や生態系保全等のための費用を国民が広く薄く負担するための森里川海協力資金制度(仮称)の創設を求めている。
• これまで、地域社会と協力しながら森林保全対策や生態系保全に主体的に取り組んできた産業界として、以下の理由から地球温暖化対策税収の使途拡大や森林環境税の創設に反対する。
  • (1) エネルギーコストの低減が国家的な課題となるなか、省エネ対策等に活用すべき財源を他の使途に用いるべきではない。
  • (2) 地球温暖化対策税は「エネルギー起源CO₂ 排出抑制のための諸施策を実施する観点から」（平成25年度税制改正大綱、2013 年１ 月24 日）導入された。その経緯を無視した使途拡大は納税者の信用を損なうものである。
  • (3) 地球温暖化対策税は、受益者負担の考え方の下、エネルギー起源CO₂ 排出抑制のための費用負担を化石燃料利用者に課していることから、その税収を森林吸収源対策に充てることは、受益と負担の関係を損なうこととなる。
  • (4) 国民に広く多面的な便益をもたらす森林吸収源対策のための費用を特定の者に負担を課すことは適当でなく、一般財源で手当てすべきである。
• 森里川海協力資金制度は、具体的な負担の仕組みが不明確なうえ、施策の必要性も資金の使途も曖昧であり、税制改正の検討対象とすべきでない。
• 新たな税負担は企業の設備投資意欲を削ぐのみならず、企業の国際競争力の低下を招き、国内での事業存続を更に困難にさせることになる。

以 上

要望団体

計 202 団体(2015 年 12 月 1 日現在)